浅間区
概要
浅間区の「浅間山」は他区の山車とは異なり、笛や太鼓に加え摺鉦やジャンボン（銅拍子）を使い、長唄や端唄のメロディーを取り入れた囃子を演奏します。山車の容姿もまた独特の形状です。
歴史
明治7（1874）年の町名改正により、石垣町22戸、瀧町40戸と今道町のうち18戸を合わせて浅間町（区）となりました。
記録によれば、寛文11（1671）年と延宝7（1679）年の祇園祭に、石垣町と瀧町は合同で「鎧武者」の練り子を、文化末（1817）年頃は石垣町・瀧町と富田町（現在の鹿島区の一部）が「ツルメソ」の練り子を、安政5（1858）年には瀧町と富田町が「武者」の練り子を出しています。「ツルメソ」は「弦召」とも書き、京都祇園祭や敦賀祭でも鎧武者のことを「ツルメソ」と呼んでいますので、両町は江戸時代を通じて鎧武者で祇園祭に参加していたものと思われます。
廣嶺神社が所蔵する江戸後期の絵巻物「小浜祇園祭礼図」（県指定文化財）には、石垣町のダシ（「石墻町」と書いた町名額の上に「芒に月」のいわゆる「武蔵野」の作り物を飾ったと思われるもの）を先頭にした石垣町の練り子９人が描かれていますが、後ろの4人は甲冑武者となっています。
▲ 垣町の練り子
（廣嶺神社蔵「小浜祇園祭礼図」より）
浅間区の山車は明治30（1897）年頃に三方あたりから購入したものと伝えられています。しかし、明治以降の放生祭に関する記録では、明治31年は「作り物」、明治33年は「奉納」とあります。明治39年以降については、明治40年の「引物」をのぞき、「山」または「山車」と記されているので、明治30年代後半に購入されたものと思われます。
古写真に見えるように、当初の「浅間山」は、長浜曳山祭の曳山を小型にしたような舞台型の山車の形状をしていました。しかし、子供歌舞伎や踊りを見せるのではなく、山車の上で独特の囃子を演奏してきました。
明治から大正末期までは笛と月琴による囃子を演奏したもので、一名「月琴山」とも呼ばれましたが、静かな囃子であったため、他区の囃子にかき消されてしまうということで、昭和の初めに囃子が変わりました。楽器は笛と小太鼓（締太鼓）、ジャンボンと呼ばれる銅拍子、摺鉦を使うようになり、本陣囃子は長唄の「汐汲」、道囃子は長唄の「花車」の一節を演奏しました。しかし師匠の急逝にともない、翌年には本陣囃子に「三社」、道囃子に「十日戎」と「越後獅子」という長唄や端唄系の囃子を演奏するようになりました。
▲ 浅間区「浅間山」
（大正〜昭和初期、井田家旧蔵古写真）
昭和57（1982）年、「浅間山」は、他区の山車と同じように、全体を二層式で出囃子をもつ形態に大改造しました。そのため、奥の部分が三層になった独特の形状の山車となっています。
▲ 浅間区「浅間山」右後方
また、平成10（1998）年頃、今宮区から「布袋」「唐子」「獅子」「唐団扇」の4曲の囃子を習い、道囃子として演奏するようになりました。このため、他区の山車と出会ったときには、「獅子」の曲で打ち合いをすることができるようになりました。
演目と構成
浅間区「浅間山」の囃子は、山車が巡行中の道囃子に、古くからの「越後獅子」「十日戎」と、平成になって今宮区から習った「布袋」「唐子」「唐団扇」「獅子」の6曲があり、宮入での奉納や、本陣や寄附をもらった家で披露する本陣囃子は「三社」です。
楽器は、笛と小太鼓（締太鼓）二張に加え、「三社」ではジャンボン一丁、「越後獅子」「十日戎」では摺鉦一丁が入ります。また「布袋」「唐子」「獅子」「唐団扇」ではジャンボンと鉦は使わず、笛と大太鼓一張・小太鼓（締太鼓）二張で演奏します。
笛方は7人ほどが山車の2階に乗り込んで演奏します。「越後獅子」「十日戎」「三社」では篠笛、「布袋」「唐子」「唐団扇」「獅子」では神楽笛を使うので、曲により持ち替えます。小太鼓は出囃子に二人が並んで座って叩きます。
▲ 浅間区「浅間山」「三社」の曲の演奏
▲ 清滝区「大津町山」・酒井区「布袋山」と打ち合いをする浅間区「浅間山」