白鬚区
概要
放生祭の5区のなかで唯一、神楽舞をともなう神楽です。神楽舞は、「お稚児さん」と呼ばれる巫女姿の3人の小学生女児が担当します。市街地再開発の影響で区の戸数が減ったため、昭和63（1988）年の出番を最後に巡行は休止していますが、神楽舞の奉納は継続しています。
歴史
明治7（1874）年の町名改正により、大蔵小路50戸、塩浜小路44戸、松寺小路のうち19戸、新町のうち5戸を合わせて白鬚町（区）となりました。
記録によれば、寛文11（1671）年の祇園祭に、大蔵小路と塩浜小路は合同で「聖」の練り子を出しています。延宝7（1679）年は二町合同で山車「巻狩山」を出しています。元禄期（1688～1704）から文化末（1817）年頃にかけて、大蔵小路は山車「頼朝山」を出しており、安政5（1858）年には「頼朝」の練り子になっていたことがわかります。
廣嶺神社が所蔵する江戸後期の絵巻物「小浜祇園祭礼図」（県指定文化財）には、源頼朝や曾我五郎などに扮した練り子の一団が描かれており、これが大蔵小路が出していた「頼朝」の練り子だと思われます。
▲ 大蔵小路の「頼朝」の練り子
（廣嶺神社蔵「小浜祇園祭礼図」より）
いっぽう塩浜小路は、宝暦5（1755）年には山車「矢の根五郎山」、宝暦7年は「神功皇后」の練り子、宝暦8年は「竹生島」の練り子、文化末年頃は山車「弁財天山（弁天山）」、安政5年は「神輿洗」の練り子を出していました。「小浜祇園祭礼図」には、「弁天山」が描かれています。
▲ 塩浜小路の山車「弁天山」
（廣嶺神社蔵「小浜祇園祭礼図」より）
また松寺小路は、寛文11年は「孟宗」の練り子、延宝7年は山車「孟宗山」、享保5（1720）年は山車「新田四郎山」、享保6年は「花車」、文化末年頃は「花」、安政5年は「花売」の練り子を出していました。
明治以降の放生祭では、白鬚区は、明治39（1906）年は「楽隊練子」を出していますが、明治40年からは「神楽」を出すようになりました。白鬚区の神楽も鹿島区から習ったものですが、白鬚区の神楽には、他の4区にはない、天冠をかぶり鈴と舞扇を持った巫女姿の3人の少女による神楽舞をともなっており、この神楽舞がどこから伝わったものかは不明です。
▲ 白鬚区神楽
（大正〜昭和初期、井田家旧蔵古写真）
再開発により白鬚区の戸数が減少したため、放生祭に神楽を出すことが困難となり、昭和63（1988）年の出番を最後に、白鬚区の神楽の巡行は行われていません。神楽屋形は先屋形・本屋形ともに福井県立若狭歴史博物館で保管・展示されています。
▲ 昭和40年代の白鬚区神楽の巡行
昭和63年の出番を最後に、神楽舞もしばらくの間休止していましたが、平成16（2008）年から神楽舞だけが復活しました。出番の年はもちろん、非番の年でもできるだけ奉納をするようにしています。
演目と構成
白鬚区の神楽も鹿島区から習ったものといわれています。囃子の曲は、他の区とほぼ共通していますが、神楽舞のときに演奏する「神楽舞」の曲は鹿島区にはありません。神楽舞や「神楽舞」の囃子をどこから教えてもらったのかは、不明です。
神楽舞は、一日目の夕方6時過ぎから、まず白鬚区本陣前で披露され、終わると旭座へ移動し、旭座の舞台上で披露します。旭座での披露が終わると八幡神社での奉納のため、八幡神社へ移動します。八幡神社での奉納は、境内の能舞台の上で行われます。旭座が移築復元されるまでは、本陣での披露と八幡神社での奉納だけでした。
▲ 白鬚区本陣前での神楽舞の披露
▲ 旭座での白鬚区神楽舞の披露
▲ 八幡神社能舞台での白鬚区神楽舞の奉納